開発者インタビューDeveloper interview

ぎらつきと外光の映り込みの抑制を両立

低反射フィルム

Q. 低反射フィルムとはどのような製品でしょうか。
また、どんな用途で使用されるシートでしょうか。

低反射フィルムとはディスプレイの最表面に使用する、反射防止(AR:Anti-Reflection, LR:Low-Reflection)を目的としたフィルムになります。このフィルムをディスプレイの最表面に貼ることで、太陽光や照明などの外光が画面で反射し、視認性の低下を抑制することができます。
当社の低反射フィルムが用いられる場所の一例としては、自動車コクピット中央部にある大型ディスプレイであるセンターインフォメーションディスプレイ(CID)や、計器などがあるデジタルメーター(メータークラスタ)などが挙げられます。外光の反射をうまく抑えなければ、視認性が低下して見えにくくなり、ドライバーの安全で快適な運転の妨げになります。
昨今の車載ディスプレイは、画面の大型化や複数化、高精細化、高画質化などに加え、デザインの多様化が進んでいます。しかし、デザイン性が優先されることで、視認性が低下することがあります。例えば、これまではデジタルメーターのディスプレイ画面の上にバイザー(覆い)があったため、強い直射日光が当たることはありませんでしたが、デザイン性の向上を目的にこれを無くすことがトレンドになってきています(バイザーレスディスプレイ)。
バイザーが無くなると外光の影響を受けやすくなり、ディスプレイの視認性が低下してしまいますが、当社の低反射フィルムをご使用いただくことで視認性の低下を抑制し、運転の安全性に寄与できると考えています。

Q. 低反射フィルムを使用することでどのようなメリットがあるのでしょうか?

当社の低反射フィルムを使用すると、外光の反射を抑制することで映り込みが低減し、車内ディスプレイの視認性低下を防ぐことができます。また、耐指紋性・耐擦傷性が付与されているため、タッチパネル操作時に付着した指紋などの汚れをきれいに拭き取りやすく、かつ拭き取り時の傷つきを防止します。さらに、飛散防止性能があるため、タッチパネル表面がガラスの場合、万が一の事故などの衝撃で割れてしまう危険性がありますが、表面にフィルムを貼ることでガラスが割れた際の破片の飛散を低減することができます。

Q. 低反射フィルムについてリンテックの強みを教えてください。

当社はこれまでディスプレイ業界向けに、さまざまな機能性ハードコートフィルムや粘着製品を開発してきました。永年培ってきた経験・知見を活かすことで、最適な機能を付与したフィルムを提案することが可能です。
低反射フィルムは、フィルム基材の表面に薄膜コート層を形成し、屈折率や厚み、微粒子添加などの調整により低反射機能を発現しています。加えて高精細画面にも対応できるAG(Anti-Glare)層と組み合わせることで、ぎらつきと外光の映り込みの抑制を両立することが可能です。
また、当社はハードコートから粘着加工までの一貫生産体制が整っていることは大きな強みです。低反射フィルムを使用するためには、パネルに貼り合わせるための粘着剤が必要となりますが、当社では自社で粘着加工が可能であるため、低反射フィルムに粘着加工をした構成でご提供することができます。その粘着剤にも、透過率制御や拡散性、UV吸収の性能を付与することができます。

Q. 製品を開発するうえで苦労したことは何ですか?

反射率をより低くしていくと、耐擦傷性や耐指紋性との両立が難しくなり、苦労しました。その他にも、表面凹凸のあるAG層に厚み100nm程度のコート層を積層するため、加工条件の確立も非常に苦労しました。試作と議論を何度も重ね、ようやく均一な性能を発現できる条件を確立できました。実際に採用・量産化されたときは、本当に嬉しかったです。

Q. 低反射フィルムで今取り組んでいる課題や今後の展開などを教えてください。

市場ではディスプレイ最表面のカバー材は、視認性や質感の点でガラスが好まれる傾向があります。ただし、ガラスは衝撃で割れてしまうなど安全性に懸念があり、ガラスのような見た目のフィルムがあれば、デザイン性・安全性の両方を実現できます。パネルへのフィルム貼合後、ガラスに限りなく近い見た目・質感となるハードコートフィルムを目指していきます。また、自動車においては新エネルギー車・自動運転機能が普及していくことで、ディスプレイの搭載台数が増えると予測しています。今後もディスプレイは更に多機能化していき、さまざまなニーズが求められるため、市場ニーズに応えるべく新技術開発にもチャレンジしていきたいと考えています。

機能性ハードコートフィルム
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